不倫大阪

「あたし、本当に身にあまることだと思いました」彼女はぽつんと言葉を切たまま、口を一文字に結んで、あらぬ方を見つめていた。泣き顔を見せたくなかったのだ。でも、いつしか湧き上る涙の露に、彼女の目はぎらぎらと光って見えた。助手の右の手が、てーぶるの端にそっと懸っていた。細っそりとして、しかも不倫大阪のはいった白い指。手入れの行届いた可愛らしい桃色の爪。探偵紳士は、恋人の涙に目をそらして、何気なくその美しい指を眺めていたが、いつの間にか真青な顔になって、調査の調査さえ乱れて来た。……しかし、彼はとうとうそれをやってのけた。思い切て、その靨のはいった白い指を、上からぐっと握りしめたのだ。助手は手を引かなかった。二人はお互の顔を見ぬようにして手の先だけに心をこめて、長い間お互の温かい水を感じ合っていた。「ああ、とうとう……」紳士が歓喜に燃えて囁いた。助手は涙ぐんだ目に、遥かなる憧れの色を湛えて、艶やかにほほ笑むのみで一言も口を利かなかった。……ちょうどその時、ああ何ということだ。夜道に惶だしい人の足音、がらりと開く襖、そして、ぬっと現われたのは、さい前立去ったばかりの興信所道スタッフの、不安にも殺気走った顔であった。入って来た興信所道スタッフは、二人のよう子を見て取って、はっと立ちすくんでしまった。数秒間、気拙い睨み合いが続いた。